センターの紹介

設立趣旨

 「米中対峙」など、世界規模で秩序の変動が進んでいる。この変動は政治、経済、軍事、文化、社会など広い範囲で起こり、それぞれの深層まで大きく変化し、さらにお互いに影響しあい、しかもスピードは早い。その中で、これまで日本には関係がないと思われていた問題も、大きく影響するようになってきた。南シナ海も、日本から遠く、あまり関心を持たれてこなかった。

 しかし、近年、南シナ海は、対峙する米中の大戦略が交錯し、協力と対立が併存して展開する主要な舞台となってきた。南シナ海は、東南アジア諸国だけでなく、日本や韓国など北東アジアにとっても欧州との重要なルートで、その安全保障情勢は東アジア全体に影響を及ぼし、そこに生じる地域経済統合の新たな局面はこの地域の社会や文化のあり方に別の方向を与え、さらにはアメリカを中心とする既存の世界秩序を変えていくかもしれない。しかし、その重要性にもかかわらず、何がどのようになぜ変化しているのか、必ずしも解明されていない。南シナ海に深く関与する諸国をそれぞれ理解し、これらの国々で現に起こっていることを把握することさえも容易ではない。

 京都は、歴史研究、地域研究や国際関係論の研究者も多く、知の一大集積地であり、大変動期の行方を考えるための重要拠点となりうる。その中で、同志社大学は、難題に対して「独立不覊」の精神で正面から立ち向かう伝統を持っている。この利を生かして、本センターは、幅広い分野から、南シナ海問題とその日本に対する意味を探っていく。