3班共同レポート                   2006年7月12日

井上敬先生の講議を聞いて

 

はじめに 6月28日に京田辺校地において予防医学博士である井上敬先生の2回目の講義があった。それについてまとめた。講義のポイントは@こころとは?A幸福とは?そしてBセロトニン分泌方法、であった。共同論文として3人で分担してそれぞれについて深く自分たちなりに調べてみた。

 

@                     こころとはなにか 井上先生は心とは頭と体の間にあるとした。ほかにも心とはなにかをユニークに定義した人がいるかと興味を持ち調べてみることにした。人工歯根、人工骨髄の開発における第一人者で免疫力を提唱する鼻呼吸の提唱者でもある西原克成氏は「こころ」は内臓に宿っていると定義する。実際、心の在りかを象徴的に物語っている例としてアメリカで心肺移植を受けたクレア・シルビアという女性の話がある。ダンサーだったクレアは心肺に重い病気を患い88年に移植手術を受けた。ドナーはバイク事故で脳死した青年だった。手術は成功したがクレアは食事の好みから恋愛の対象まで、ガラリと変わってしまった。移植後、それまでとは違い女性を恋愛対象としてみるようになり、人格が著しく男性化した。アメリカではいろいろ先端的な移植医療をやっていて、ヒトの大人の脳に胎児の脳細胞を移植してパーキンソン病を治したりしている。しかしそれで患者の人格に変化が起こったことはない。一方、内臓移植を受けた人たちではクレアのように人格の変化が数多く発生している。西原氏はこころの在りかは心臓より肺とみている。実際に心臓移植だけだとそこまで変化は起きないが心肺同時移植だからこそ人格に劇的な変化が起こる。西原氏は、肺の発達過程の根幹には腸があるので腸が全ての感情を生み出す基とする。人間の原型は海のパイナップルとも呼ばれるホヤである。動物も植物もオリジンはホヤ。そのホヤが海中で進化して、ついに海から上陸するに至り、そこから脊柱動物の進化が始まった。ホヤの体は養分を吸収する「腸管」と呼吸のための「 腸(さいちょう)」でできている。ホヤは口から食物と酸素を取り込み、 孔と肛門へ排出して生きている。つまり腸がシンプルに命を支えている。ホヤが海から上陸したのが今から3億年くらい前である。つまり脊椎動物は腸を中心に、三億年かけて体壁と内臓が複雑に進化したものである。体壁とは筋肉、神経、血管、皮膚などで、内臓とは腸、肺、心臓といったものである。人の生命維持に必要なそれらすべては、もともと腸から発生している。生物進化の過程で見ると、脳の発生は腸よりはるかに遅い。では脳とは何かというと、2500年ほど前にヒポクラテスが「外界と意識の仲立ちをする(窓口になる)のが脳」と定義したが、西原氏は脳とはまさしく外界と腸管をつなぐ窓口とする。脳は神経細胞に電流を配電するトランジスターか、あるいはモニターであり配電盤なのだから、脳それ自体に人格は宿らないとする。細胞間の電流がスパークすることによって感情は発生する。その電流を発生させているのは何処かというとそれが、腸をはじめとする内臓。脳は単なる電極に過ぎない。電極から生まれるのは計算と論理だけである。西原氏はほかにも「こころ」と「精神」は別物とし、実例では豊臣秀吉を挙げている。秀吉の「こころ」は人を殺し「精神」は芸術を愛したとする。茶の湯の師である千利休にさえ、死を宣言した。一人の人間の中に、相反する部分が同時に存在するということは、こころと精神が違うということであるとする。

疑問 井上敬先生は精神をなんと定義するのだろう?魂の話が講義であったがそれも一緒に教えて欲しい。

 

A  幸福とは?    井上先生はこころに実体はないとした。神経伝達物質であるドーパミン、セロトニン、ノルアドレナリンがそれぞれ意欲、喜び、悲しみに関係し、こころの精神活動を表している物質と現段階の脳科学では有田秀穂教授によって発見されている。1670年オランダのスピノザは、人間の本質は欲望と喜びと悲しみによって成り立つといった。井上先生は幸福とはセロトニンが脳内で出ているときのことをさす、そして今までの哲学による幸福論を覆す画期的なことがわかったといった。有田秀穂著『セロトニン欠乏脳―キレる脳・鬱の脳を鍛えなおす―』によるとセロトニン神経は各種のリズム運動によって活性化されるとされる。基本的な人間活動として、筋肉の収縮と弛緩を周期的に繰り返すリズム運動がある。歩行・咀嚼・呼吸のリズム運動がある。これらの運動がセロトニン運動を興奮させる。人は生まれてから成長するにしたがってリズム運動が複雑になっていく。歩行運動もウォーキングからジョギングそしてマラソンと厳しさを増す。自転車こぎも水泳も四肢のリズム運動になる。呼吸のリズム運動を意識したものが、坐禅の呼吸法、ヨガの呼吸法、気功法など。太極拳もその一種となる。念仏やお経を唱えたりするのも、呼吸のリズム運動の一種。歌うことも呼吸法を意識するならば立派なリズム運動の一種。咀嚼のリズム運動としてはチューインガムをかむのも面白い例として挙げられる。

 では、最後にセロトニン分泌方法について調べた。

B     セロトニン分泌方法   井上先生はセロトニンを増やすには1太陽の光に5分当たる、2血中二酸化炭素を増やす、3 30分間の反復リズム運動4トリプトファンという必須アミノ酸が含まれる食品の摂取5感謝することの5つが必要という。古代の人は太陽をあがめていた。網膜に入った光信号は脳神経系に影響を与える。人間は生体機能が24時間周期で変動するようにできている。人間は網膜で光を捉え脳が自律神経機能を整える。光信号はもうひとつ縫線核セロトニン神経に影響を与える。セロトニン神経は覚醒状態にさせる働きがある。光はそれを強めるものと考えられる。朝日を浴びながらのウォーキングやジョギングはセロトニン神経に2重の活性化になる。トリプトファンを多く含む物質はバナナ、納豆などの大豆食品、チーズなどの乳製品。これらの食品を意識してとるようになるとセロトニン合成は活発になる。

 

おわりに 自主学習によって理解が深まった。セロトニンをよく出す生活習慣を続けたい。