1. 油水界面・接触線の不安定性と振動運動
油水界面や界面と固体壁の接触線が化学反応により動き出すことがあります。この運動は様々な方法で秩序化することが可能であり、また、特定のイオンなどが含まれるときにのみ運動を始めるものなどもあります。この研究では、そのような動きが現れる原因を解明し、界面の新しい性質を見つけることを目的としています。細胞膜のような機能をもった界面の研究に発展する可能性があります。この研究では、例えば、イオン選択的なマランゴニ不安定性、電位差によって発生する油水界面の不安定性(電気化学的不安定性)、接触線の非線形振動の同期と電場による制御、微小水滴の自己運動などを対象としています。これらはすべて、界面での化学反応と吸・脱着が協同的に生み出す現象で、その結果、溶液は生命的な印象をあたえる動きを示します。
 
油水界面の自発的運動
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2. 内部構造を自己生成する微粒子
反応と拡散が組み合わさると、空間的なパターンが自己生成します。この研究では、ゲルの中の反応と拡散で粒子を形成させ、粒子の中に化学的・物理的なパターンを自己生成させることを目指しています。この研究では、内部で化学組成が周期的に分布する粒子や、コア・シェル構造をもつ粒子などが、寒天などのありふれた媒体の中で全く自発的に形成します。また粒子の集団が、ゲルの中で不思議なパターンを形成します。この研究は、周期的な模様をもつ鉱物や岩石の研究から始まりましたが、環境にやさしい水系の一段階プロセスを用いた、新しい機能性粒子の合成プロセスが開発できるかもしれません。
 
周期構造を持つ(Ba, Sr)SO4粒子
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3. 自己運動する分子集合体
両親媒性分子が自己組織化してつくる多くの分子集合体は、細胞とよく似た構造をもっています。この研究では、化学反応を利用して分子集合体を自在に動かすことを目的としています。生命体の中では、分子集合体の一種であるベシクルが必要な物質を内包してレールの上を化学反応の力で動いています。この運動によって必要な物質が必要な場所に運ばれ、内包される物質は途中に存在する様々な物質の影響をうけることもありません。このようなシステムを人工的に作成することを目指して研究を進めています。特定の化学環境や物質を求めて自ら運動し形を変えていくような分子集合体は、薬物送達や特定の場所で化学反応を起こすシステムなど、新しい物質移動の方法として発展する可能性があります。
 
pH勾配によって自発的に運動するベシクル(分子集合体)
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4. 自己運動する触媒粒子
生物は食物を摂取することでエネルギーを取得し、そのエネルギーを消費することで様々な運動を行っています。一方、触媒は化学反応の速度を大きくするための物質ですが、触媒粒子の中には、自らが触媒する化学反応のエネルギーを運動エネルギーに変換することで自発的に動くものがあります。この研究では、このような運動を秩序だった形に制御することを目指しています。例えば、自ら反応物質の多いところに移動していく触媒粒子や、反応が終わると一か所に集まる触媒粒子、均一な反応溶液中であっても並進や回転などの指向的運動を行う触媒粒子のような従前に無い機能性微粒子を開発できれば、ミクロな化学システムの動力源の開発につながるかもしれません。
 
過酸化水素水中で様々な運動を行う白金粒子
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5. 人工的な能動輸送系のデザイン
通常、物質は化学ポテンシャルの高い方から低い方に移動し、工業技術の多くは、この過程を利用して設計されています。生命系では、化学反応のエネルギーを利用して化学ポテンシャルに関係なく物質を移動させています。これを能動輸送といいますが、これを人工的に実現している研究はほとんどありません。上で説明したような化学反応で動く物体を利用して物質を運ぶことは難しくありませんが、能動輸送を実現するためには、運んできた物質を一ヶ所に収集する過程を、化学ポテンシャルによる力だけに任せるとことができません。この研究では、この困難を乗り越え、能動輸送系を人工的に実現するための研究を進めています。
 
能動輸送の概念図

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