香港中文大学の留学報告

執筆:和田拓之(法学部法律学科94年度生・97年度留学)
 私は97年度9月より98年度5月に香港中文大学IASP(International Asian Studies)にて交換留学をしましたので、その報告を致します。
 中国語の学習を目的に参加される学生が多いと思うので、はじめに中国大陸側の大学と比較して述べます。

 

1.現地の言語環境と生活、履修について

 留学期間中、大学内の生活では英語が主です。中文大学の場合、大陸と違い、必ず香港人の学生と2人もしくは3人部屋になりますが、彼、彼女らが大陸系やその他移民何世かでないかぎり、あなたが広東語を使えないかぎり、普段の会話は英語になります。 彼らは大抵の場合、大学の授業のテキストも英語の専門書であり、日常会話には不自由しません。  留学生のオフィス(OISP=国際課のような部署)には1,2名日本語、北京語が話せる方がいますがあなたが広東語を履修したりして積極的に広東語、北京語で話しかけたりしない場合はコミュニケーションは英語でとります。留学生のあらゆる書類も大抵は英語の文書です。  OISPには留学生が100人程度おり、5,60名は北米からの留学生で彼らとのつきあいもすべて英語です。(中国系の留学生とは練習として話すことはありますが。)留学生は一つのクラスを3ユニットとして21ユニットまで単位取得を目的として履修できます。(聴講もできますが)  医学部、看護学科などの特殊なコースを除き、留学生も基本的には大学のすべてのコースを自由に履修できます。(これは非常におおきいと思います。)英語、広東語、北京語(普通語)で開講されるコースがそれぞれあります。 同志社からの留学生の場合、中国語(普通語、広東語から選ぶ)は12ユニット(3クラス)まで無料で履修でき、希望で留学生向けに行われる英語のスキルの授業や、本科のコースを履修することができます。
 私の場合、朝9時半から12時半まで普通語、週3日は午後 法律の授業(憲法、国際法)をとっていました。 ちなみに私のとった法律の授業は香港人の学生らと一緒で、アメリカ人の先生により英語でおこなわれ、週一回はテューターによるディスカッションのクラスでした。  毎回リーディング アサインメントが大量にあり、かなりの準備、努力を要求されますが、実際の現実の問題をトピックとして扱い、内容はとても充実していました。 普通語と英語、北京語の能力をそれぞれできるだけ上げたいと思っていたので学内で毎週3,4回行われる、普通語、英語ネイティブとの昼、夕食会に参加したり、各種の学会、セミナーに積極的に参加しました。
 ほかに充実したオーディオルームや学生による普通語勉強会等もあり、やる気さえあれば 香港でも普通語の能力を伸ばすことは可能です。 また中国のシンセンが電車で30分の位置にあり マルチビザ等を取得すれば、週末にいくことも可能です。
 留学生の場合、大抵、週休2日となります。 長期の休日は10月のはじめに4,5日、12月、1月に10日から2,30日程度、2月あたまに1週間程度あります。 東南アジア、台湾へのパックツアー、航空券はとても安いので旅行に気軽にいける環境がそろっています。
香港では日本人留学生は30名程度、広東語ベースの環境のためか、大陸と違いお互い、普通語で会話するという雰囲気はないので、彼らと普段から行動をともにするのは語学の習得を考えると程々にした方がよいかもしれません。
 広東語はできれば独学ででも覚えた方が良いでしょう。 広東語なしでも一年間すごすことは本当に簡単ですが、現地の方との交流等考えると、できるだけやってみることをお勧めします。普通語ができればある程度コツがつかめればすぐに覚えられるはずです。また香港、台湾では繁体字が使われていますが、現地の情報を収集するのにも覚えた方がいいでしょう。

2.留学中、留学以後の就職活動について

 3年次、4年次から留学し、その後就職予定の方も多いと思います。これまでの帰国報告書で就職活動に関することが少なかったので香港の留学の場合の状況を説明します。
 大陸の留学の場合、帰国は6月以降ですが、香港中文の場合中国語のみを履修の場合は今年は4月18日に日程がすべて終了したので4月中に帰国することも可能です。 この日程だとマスコミ、金融機関等除き十分に間に合うものとおもいます。 また香港では、日本の就職の情報等(一般の情報について)が大陸に比べると入手しやすく 準備もしやすいと思います。 まずコンピューターの環境が非常に整っているので日本語関係のソフトをダウンロードすれば大学のパソコンでも日本語でのメールの送受信、ウエブサイトでのセミナーの予約等可能ですのでこれは大きいです。 また個人でパソコンを持ち込んだ場合、宿舎の各部屋から学内のLANにつなぐことができ、簡単に日本語の環境でのコンピューティングが可能です。
 大学の図書館、日本語研究科の資料室には 日本語の雑誌、新聞、書籍が多少あり、日本の情報にも遅れずに留学を遂行できます。また日本語研究科の資料室ではNHKの視聴も可能です。日系のデパートには日本語の本屋もあり、各種の情報はここででも得られます。しかし、留学の意義から考えるとできるだけ、中国語、英語で現地の情報に触れた方がいいでしょう。(香港の出版、マスコミは非常に発達していますので。)多少ですが、アメリカの企業等は香港、中国でインターンシップを実施しています。就職活動とはいわなくても勉強になると思います。

3.大学図書館について

 香港の留学の場合、語学の履修だけに終わらせるのは非常に勿体ないと思います。 図書館等の設備が非常にいい上に学会等も盛んです。世界中の学者が集まってきています。学生の学力も非常に高いです。
 是非本科のコースをとるなり、個人的にでも何かの研究をされたほうがいいと思います。 特に中国関係の資料、文献は膨大な量があります。中国語だけでなく、英語、他の欧米の言語での書籍も多量にあります。(日本語も多少あります。5000冊程度か?)
 

 香港では遊ぶ環境、学ぶ環境、ショッピング、旅行の環境でれも非常に発達、整っていますが、 八方美人にならず、留学中に自分が何をしたのか目的をはっきりしないとどれも中途半端におわります。しかし、頑張れば頑張った分だけ成果も非常に期待できるところではあります。
 私の場合、普通語に関しては新聞や専門書を読み、自分の聞きたいことが聞け話せるまでに伸ばせたこと、英語に関しては自分の専門分野では語学も知識も議論できるまでに伸ばせたこと、広東語も日常会話できるまでになったことが客観的な成果と言えます。 また留学の受け入れが非常に整っていたことが留学、帰国、就職をスムーズに行えたということでとても効率的で充実した留学だったと思います。
 

1. 語学

大学以外では広東語しか通じない。
 

2. 宿舎

留学生は大学に振り分けられる。香港人との2人もしくは3人部屋。キッチン、冷蔵庫、トイレ、シャワー各階にあり共同。 エアコンがついているかどうかは運しだい。 大体の部屋は天井にファンがある。テレビ、雑誌、勉強室、娯楽設備(卓球、テニスコート、ビリヤード台)等たいていの宿舎には設置(一階もしくは隣接した建物)されている。宿舎によってはコンピューター オーディオルームも。
 

3.大学図書館

学内の3つのカレッジ、及びメインキャンパスにそれぞれあり、書籍は分類ごとに各図書館にわけられている。例えばユナイテッドライブラリーは法律関係の書籍である。 学内ネットワークに繋がったすべてのPCから検索可能。
海外の図書館の検索もできる。 日本語書籍も一個所ではなく種類ごとに分けられている。中国語入力のためのライティングパッドもあり。手書きで入力可能。一度に10冊2週間まで通常借りられる。

「図書館にある日本語雑誌、書籍」

 ユナイテッドライブラリー
法律時報、ジュリスト、各大学の学報等、(古い)その他 藩法など貴重な文献もある。
憲法、刑法など一般の本もある。
 New Asiaライブラリー…・・
画集など、あまり多くはない。
 Chung Chi ライブラリー
日本語研究科に近いせいか、文学、教育等の日本語書籍が充実。
朝日新聞がある。 その他,日経Trendy、DIME等(変更もある)
 メインライブラリー
論座、エコノミスト、東洋経済、日経ビジネス、月刊 鉄道、 その他 各大学の学報など。 
国際政治、日本政治、マスコミ、国際法等の書籍がある。
日本語研究科 読書室
アエラ、外交フォーラム、 新聞ダイジェスト等、雑誌多数。ここでNHK視聴可。 
時事問題を勉強するのに役立つ。
他に単行本、漫画多数。

4.運動設備

各宿舎に隣接しているもののほかに大学所有のものもあり、テニスコート、卓球、ビリヤード、プール、競技場、スカッシュコート、体育館がそれぞれいくつかあり、留学生も使用可能、各種サークルに入ることもできる。
 

5.学内のその他の設備

本屋、理容室、スーパーマーケット、簡易郵便車
ハンセン銀行(口座はここでも開設可能 ATM24時間利用可)
TOEIC,SMAT,GMAT等扱うオフィスがメインライブラリーの側面にあり、ここで申し込み、受験ができる。費用は日本より高い(円安のため)
 

6.ショッピング

食料、日常品は大学のスーパーマーケットで揃えることができます。 大学から二駅先に沙田(シャテイン)という巨大なショッピングモールがあり、西友もはいっているので日本の食品もここで買えます。
九龍などダウンタウンには電車やバスで、3,40分くらいです。
夜、遅くなってもミニバスが24時間走っているので帰ってくることができます。
毎年6月末〜8月末、12月末〜2月初め等がバーゲンで80%オフくらいまで安くなります。
 

7.旅行

中国大陸にはビザをとる必要はありますが、電車で気軽にいけます。一番安く旅ができるでしょう。台湾やその他の東南アジアも安いです。格安航空券などはインターネットや新聞で広告がのっています、エアクーリエを利用すると一番安いです。
ちなみに私は中国の桂林や長江下り、電車で中国からヴェトナムに入ったり、台湾にいきました。(台湾は安いときで往復1万円くらいでいけます。)
 

8.アルバイト

学内で一時間50HK$(900円くらい)でできることがあります。
留学という目的のためにあまりたくさんすべきではないと思います。
 

9.食事

自炊もできるが、各宿舎に食堂があり、朝8時くらいからよる9時くらいまで。宿舎による。 メインキャンパス、Chung Chin Collegeの食堂が比較的おいしい。
夜や、週末に現地の方と食事すること多し。現地の習慣として、点心を丸いテーブルにてみんなと食べたり。夜に屋台に食べに行く習慣がある。
世界各国の料理が集まっている。マクドナルドは17ドル(300円ちょっと)でセットで買えるのでよくいくだろう。 その他に吉野屋やラーメン、すし等日本食のレストランも多数ある。 交際費のほとんどが食費。
 

10.両替、送金

日本からの送金はシティバンクが便利。
ハンセン銀行等 現地で口座を開いておくと便利。60$から開ける。日本円から香港ドルへの両替も口座があれば手数料なしで銀行でできる。チョンキンマンション周辺がいいとはいわれているが変わらない。
中国人民元への両替は上環駅の近くに並んでいる両替商が一番レートが良い。
香港ドル、USドルその他欧米の通貨で預金ができる。定期も一週間からできる。最初はある程度定期にいれておくと良いと思う。
 

11.電話、郵便

電話は香港内に限り以前は無料だったが、どんどん変わる傾向にある。宿舎や部屋、大学のオフィス等からの香港内電話無料。町中でも無料とそうでないものがある。
国際電話は香港の週刊誌等にのっている国際電話の会社と契約するのが良い。日本への電話で一番安いものが一分 2.68HK$(1ドル現在18円)。
郵便、宅急便は学内に午後来る簡易郵便局および沙田にある。 日本よりずっと安い。
 

12.各種 検定試験

TOEIC,GMAT,SMAT等
大学図書館の側面のオフィスにて申し込み受験ができる。TOEIC500HK$
TOFLE
新聞に広告がたまにでている。彩虹(サイチョン)の近く?の香港考試事務局?にて申し込みできる 650HK$(その他の試験も扱っている)
HSK(漢語水平考試)
香港城市大学と香港大学でそれぞれ11月、5月に実施。申し込み別々650ドル(テープ 問題集付き)*中国広州等でもうけられる250元くらい。
 

13.交通

 学内ではバス、シャトルバスが走っている。一番遠い宿舎から大学駅までは歩けば3,40分かかる。  留学生は学生の定期券を購入することができとても安い。電車、地下鉄、バス、ミニバス、フェリーを使えば香港ではほとんどどこでもいける。 自転車コースが大学近くにあり。貸し自転車屋もある。トレッキングコースも。
 

14. 天候、気候

 一年中暑い、2月のわずかな日を除けば一年中 半袖でも大丈夫。湿度が日本以上に高くじめじめしている。夏は除湿剤でも部屋においておかないと大変なことになる。 しかし建物、電車の中では冬の寒さほど冷房が利いているので、そんな夏でも上着は必要。 雨はあまり降らない。夏は暑いがエアコンをつけている宿舎が増えてきているので運次第。

最後に私の香港の留学に関する格言。
「目的をわすれず、時間、お金の浪費を防ぐ。」
簡単なようで難しいです。 とくに留学生の中ではめちゃくちゃ遊び、ショッピングをする人もいるので彼ら彼女らのペースに巻き込まれないように。香港では持てる者と持たざる者の差が地元民だけでなく留学生内でも激しいです。
*奨学金…私は「平和友好交流基金」を運よくもらえましたが。
だめだった人も民間の奨学金や、香港中文大の奨学金に募集してみれば良いと思います。 同志社の大陸の留学の場合、大学から毎月500元ほど奨学金をもらうので民間に募集できませんが、香港への留学はできます。逆にいえば香港での留学は奨学金なしではかなりたいへんです。