宗教倫理学会「変化する世界における宗教−相克と調和−」 第6回研究会
於:2005年9月30日 キャンパスプラザ京都
「近代西欧のヘゲモニーへのアンチテーゼとしてのイスラームの呼びかけに真摯に耳を傾ける」
レジュメ
イスラーム世界は元々多宗教社会であり、異なる宗教の信奉者が個人、共同体レベルで隣人として共存しているのは当たり前であった。たかだか10%にも満たない異教徒の移民を受け入れて数十年経っただけで多元社会論を語りたがる西欧とは比較するのが誤りである。
どの世界宗教も広い世界の中でたった一人との自覚から出発した。「このグローバリゼーションの中で、各宗教は絶対性要求を取り下げらなければならない」、との主張は、自分たちこそが最も「進んだ」人間だとの思い上がりによるもので、それ自体、歴史の中で繰り返し現れる「自己神格化」現象の一つに過ぎない。
イスラームを理解するためには、近代西欧の影響のない古典イスラーム学を参照することによって、「平和主義」、「法人」、「自由」、「民主主義」、「寛容」、「テロ」、「平等」などといった現代の言説の虚構性に気づくことが必要である。
イスラームの使命は、イスラームの宣教ではなく、イスラームの秩序を全人類に広めることである。それは現代の文脈においては虚偽のナショナリズムと民主主義の幻想の打破、領域的国民国家の廃棄を訴えることを意味する。そしてそれは、神の法の制限の下に、イスラームの理念にコミットする者は、各人の能力に応じて自分たちの判断で正義の法と秩序を確立する積極的義務を負う一方、コミットしない者は、納税し法の許す範囲内での「私的領域」での自由を享受して(政治的・道義的)責任を負うことなく、共存する多元的法空間(ダールルイスラーム)に全世界を変えていくことに他ならない。