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2005年2月23日座談会



場所:オーマイニュース編集局内代表事務室
参加者:
オ・ヨンホ代表

チョン・ホヨン副社長
ミン・キョンジン国際部長・記者
浅野健一 同志社大学教授
田中康文 アットニュースとリム有限会社代表
李其珍(同志社大学大学院・通訳)


・・・・質疑・討論記録・・・・

ミン記者:

日本でオーマイニュースのようなネット新聞が創刊されると、そのターゲットはどのような人々になるのでしょうか。オーマイニュースは始めから全ての人をターゲットにしたのではなく、政治的に進歩的な人々を読者として創刊されましたが、日本でもそのような対象が存在するのでしょうか。

浅野:

まさに今言われたことが重要です。日本の既成メディアは、総花的です。どのメディアもそういうように作られていて、ある一つの主張・ターゲットを持っているというのは、日本では非常に流行らないのです。しかし、私は、ある一つの主張を持つべきだと思います。JANJANも日刊ベリタもうまくいってないのは、やっぱり総花的な紙面を作っているからだと思います。

 朝日新聞が典型的で、かつては日の丸・君が代に反対で、自衛隊にしても憲法違反じゃないかと言っていたのに、今は、全く読売新聞と同じようになってしまっていて、かつてあったような憲法擁護と改悪阻止という論調は無くなってしまっています。

ミン記者:

 進歩的な読者の層は大きいですか?

浅野:

 とても小さいです。しかし、きちんと説明すれば分かる人は多いのですが、最初からしないので、それをするとまずい。例えば、天皇制をなくそうとか、米軍に出て行ってもらおうとか、そういう言論が減っているというか、そういうことをいうとまずい。タブーですね。そういう意識がすごく大きいのです。はっきりと進歩的な人をターゲットにしているのは、岩波書店の『世界』、株式会社金曜日の『週刊金曜日』、日本共産党の『赤旗』、この3つしかないのです。しかし、どんどん部数が減っていて、『世界』は1万部も出ていなくて潰れる寸前。『週刊金曜日』も2万部。ちっとも伸びないのです。世の中が悪くなっていると思うのに、伸びないという傾向がある。そういうのを見ると、ますます進歩的なメディアはマーケットとして弱くなる。従って、週刊金曜日も世界も、内容がどんどんとマイルドになっている。

ミン記者:

朝日新聞の論調が変わっていると聞きますが、朝日新聞が日本メディア市場の中で生き残るためには読売新聞のように保守色を持たなければならないでしょう。それが今のメディア界の現状です。

浅野:

そうですね。9.11以後です。朝日新聞は、アイデンティティを失いました。元々、朝日新聞の私と同じ世代の記者が保守的であると言えます。左翼だった人が右旋回していった。船橋洋一というコラムニストが典型的です。彼は今、小泉政権に気に入られています。

オ代表:

現在日本の大学生や若者の性格が保守的だと(浅野先生が)言いましたが、実際に右翼的・保守的な大学生の声がそれほど大きいのか、それともインターネット上でその声が増幅させられ大きくなっているのか、どちらでしょうか。

浅野:

  私は、同志社大学に移って丁度11年たったのですが、年々保守化しています。特に歴史認識が、阿部晋三・石原慎太郎・小林よしのりなどの歴史改ざん主義者にものすごく影響されています。きちんと歴史を勉強する学生がそのようになっているので怖いわけです。あるいは、社会科学を勉強する人が、共産主義はもともと危険だ、と思っている傾向が強まっています。ネット上だけで目立っているわけではなくて、全体的にそうであることは間違いないです。

 今年、中学校の教科書で、慰安婦という言葉が全部消えたんですね。つまり、歴史を教えないわけです。教えないところに、さらに右から言説が来ると、皆受け入れてしまう。

オ代表:

JANJANや日刊ベリタの影響力が弱いとおっしゃいましたが、その原因は何であると思いますか?

浅野:

 まったくのオーマイニュースモデルではないということですね。特にJANJANは、ある業界の人がお金を出して、竹内さんに頼んだわけです。その竹内さんが、オ代表とは全く違うジャーナリスト。要するに、朝日新聞記者から市長になった人です。そういうところには、オーマイニュースの同志みたいな人はあまりいませんよね。私も参加したいと言ったのですが、返事すらありませんでした。だから私のような人間はいらない、ということですよね。日刊ベリタのほうは、志がある人は多いのですが、全く金がなくて、一人専従の人を10万円え雇っているだけで、オフィスもありません。よって失敗してるというよりも、サークルみたいな状態と言ったほうが正しいです。これでは最初から無理ですよね。

田中:

ライブドアが市民記者制度を始めましたが、それをどのように思われますか?また、成功すると思いますか?

浅野:

実は、日刊ベリタもライブドアと提携しています。メディアからの情報だけですが、私の周りに、オーマイニュース的なセンスを持った人はいるのかな、という疑問はありますね。

日経新聞的な経済情報とか、レジャーやハウツーものの市民記者であって、例えば靖国神社をなくそうとか、米軍は沖縄から撤退しようなどのそういう姿勢はないように見えます。ただ、彼らのいいところは、朝日新聞などの既存メディアには影響されていないところです。だから可能性はあると思います。

ミン記者:

日本では進歩的な読者の層が薄いと言うことですが、その回りにいるのはどのような人々ですか?(浅野先生:沈黙する多数)進歩的な市民層と沈黙する多数はどれくらいの割合ですか?

浅野:

日本には「天皇は神だ、天皇制は素晴らしい」と思っている人が5パーセントいて、「天皇はなくすべきだ」という人が5パーセントいます。そして、あとの90パーセントはどちらでもいいのです。70パーセントぐらいは、自分の生活さえよければどっちでもよいと思っています。だから、自分の生活とアメリカ軍の問題やイラクの問題が関わってくるんだよと教えればいいのです。そういう人たちが僕らのターゲットになると思います

ジャーナリズムは、一番重要な問題を一番大きく伝えて、一緒に解決していくということですよね。

しかし日本のメディアでは、選択と集中をしないで、「子供が教師を殺した」というニュースを大きく報じて「政治家が1億円もらった」というニュースは大きく扱わないという逆転現象が起きています。「子供が教師を殺した」ということがニュースだというように、皆なれていて、誰も疑問を持っていない。それは違うんだ、ということを楽天でもライブドアでもやってくれればいいと思いますが。

チョン・ホヨン副社長:日本の若者は新聞やインターネット新聞にどの程度接していますか?

浅野:

減っているとは思いますが、世界的に見ると、まだ読んでいる方ではないでしょうか。テレビは見ていると思います。最も影響力を持っているのはテレビでしょうね。

オ代表:

2チャンネルの場合は匿名の掲示板だと言え、とにかくもの凄い数の若者が参加していることが言えると思いますが、そのような勢いをオーマイニュースのような進歩的メディアに転向させることは考えられないでしょうか。

浅野:

たださっき言ったようにそういうようにすると、右翼的なものが占拠してしまいます。例えば富士ゼロックスの小林陽太郎会長が、首相は靖国神社参拝をやめるべきだというと、その日のうちに総攻撃です。だから、私もつくりたいのですが、できないのが現状です。というのは、右翼はものすごく組織的にやるのですね。とても怖いです。天皇を批判したりすると、実際に爆弾やカミソリが送られてきます。だから皆、そのような発言をすることを恐れています。

 2ちゃんねるは自由な言論といっていますが、私の友達が実験したところによると、そうではありません。私の友達が、2ちゃんねるに、日本で組織暴力団の名簿や、皇室に関する情報を発信しようとしたのです。ところが流れないのです。何度もやってみたそうです。だから西村博之代表らは、絶対チェックしていると思います。特に左翼からの言論を。2ちゃんねるの自由な言論というのは嘘なのだと私は確信します。大体90パーセントが右翼的論調かナンセンスな言論ですね。5パーセントくらいが違う人たちです。

オ代表:

 天皇制などのタブーはは削除するとしても、政治的に革新的・進歩的な意見はどうですか?

浅野:

 それをすると、皆でむちゃくちゃ叩くのです。だからみんな恐れてしまうのです。これには理由があります。「生長の家」という宗教団体ご存知ですか?いわゆる天皇を神とする宗教です。この団体が、完全にコミットしていますね。間違いありません。

 日本では組織された左翼、民衆運動、労働運動はすごく少なくて、組織された極右がものすごく強いですね。例えば、社民党の学生の支部は一つもありません。日本共産党はわりと大きいのですが、それでも学生組織・民主青年同盟の学生は同志社に二人しかいません。京都大学にも5人しかいません。私が学生の頃は、おそらく300人以上いたでしょうね。日本では、左翼や社会主義者は完全に壊滅してますね。

オ代表:社会主義者とか左翼ではなく、市民団体・NGOの状況はどうですか。

浅野:

 それも外国に比べたら非常に弱いです。若いことはみんなやりますが、30代半ばになるとやめていきます。オ代表が、韓国の3・8・6世代とヨーロッパの68年組を比較して書いていましたが、まさに日本はその両方ともないのです。ないというか、ほとんどが右旋回してしまって私なんかは、学生のときから左翼でもないのですね。リベラルだったのです。しかし、現在では一番左にきてしまっています。  

日本の69年、70年の学生が、今の学生の親なのです。この世代が2ちゃんねるの子たちを生み出しているのです。現在大学の教授だったり、朝日新聞やNHKの記者だったり。それがみんな保守的だから、子どもたちも保守的になるのです。自分の子どもが大学に入ったら必ず言うのが、危険だから学生新聞と自治会には入るな、ということなのです。

チョン副社長:では、学生運動や学生新聞は比較的に進歩的な方ですか。

浅野:

 「だった」のです。同志社大学では、新聞も自治会もありません。新聞に至ってははもう10年ぐらいないです。一番古い学生新聞なのですがね。今、同志社にあるのは、学生スポーツ専門の新聞だけ。それは、体育会が出しているのです。だから自衛隊の問題など絶対に載りません。

皆:学校で学生新聞が発行されないの?(驚き)

 討論は食事に移って続いた。。。

                           <記録・整理に森類臣(同志社大学大学院)さんの協力をいただいた。>