過度に傷害を与え又は無差別に効果を及ぼすことがあると認められる通常兵器の使用の禁止又は制限に関する条約

締約国は、

国際連合憲章に基づき、各国が、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の主権、領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎む義務を負つていることを想起し、

敵対行為の及ぼす影響から文民たる住民を保護するという一般原則を想起し、

武力紛争の当事者が戦闘の方法及び手段を選ぶ権利は無制限ではないという国際法の原則並びに武力紛争においてその性質上過度の傷害又は無用の苦痛を与える兵器、投射物及び物質並びに戦闘の方法を用いることは禁止されているという原則に立脚し、

自然環境に対して広範な、長期的なかつ深刻な損害を与えることを目的とする又は与えることが予想される戦闘の方法及び手段を用いることは禁止されていることを想起し、

文民たる住民及び戦闘員は、この条約及びこの条約の附属議定書又は他の国際取極がその対象としていない場合においても、確立された慣習、人道の諸原則及び公共の良心に由来する国際法の原則に基づく保護並びにこのような国際法の原則の支配の下に常に置かれるべきであるとの決意を確認し、

国際間の緊張の緩和、軍備競争の終止及び諸国間の信頼の醸成に貢献し、もつて、平和のうちに生活することに対するすべての人民の願望の実現に貢献することを希望し、

厳重かつ効果的な国際管理の下における全面的かつ完全な軍備縮小への進展に貢献するためにあらゆる努力を継続することの重要性を認識し、

武力紛争の際に適用される国際法の諸規則の法典化及び漸進的発達を引き続き図ることの必要性を再確認し、

ある種の通常兵器の使用の禁止又は制限を促進することを希望し、その使用の禁止又は制限の分野において達成される成果が、当該兵器の生産、貯蔵及び拡散の終止を目的とする軍備縮小についての主要な討議を容易にすることができるものと信じ、

すべての国、特に軍事面で主要な国がこの条約及びこの条約の附属議定書の締約国となることが望ましいことを強調し、

国際連合総会及び国際連合軍縮委員会(the United Nations Disarmament Commission)が、この条約及びこの条約の附属議定書に規定する禁止及び制限の範囲を拡大する可能性について検討することを決定することができることに留意し、

軍縮委員会(the Committee on Disarmament)が、ある種の通常兵器の使用の禁止又は制限のための新たな措置の採択について審議することを決定することができることに留意して、

次のとおり協定した。

第一条 適用範囲

1 この条約及びこの条約の附属議定書は、戦争犠牲者の保護に関する千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ諸条約のそれぞれの第二条に共通して規定する事態(ジュネーヴ諸条約の追加議定書I第一条4に規定する事態を含む。)について適用する。

2 この条約及びこの条約の附属議定書は、1に規定する事態に加え、千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ諸条約のそれぞれの第三条に共通して規定する事態についても適用する。この条約及びこの条約の附属議定書は、暴動、独立の又は散発的な暴力行為その他これらに類する性質の行為等国内における騒乱及び緊張の事態については、武力紛争に当たらないものとして適用しない。

3 締約国の一の領域内に生ずる国際的性質を有しない武力紛争の場合には、各紛争当事者は、この条約及びこの条約の附属議定書に規定する禁止及び制限を適用しなければならない。

4 この条約又はこの条約の附属議定書のいかなる規定も、国の主権又は、あらゆる正当な手段によって、国の法律及び秩序を維持し若しくは回復し若しくは国の統一を維持し及び領土を保全するための政府の責任に影響を及ぼすことを目的として援用してはならない。

5 この条約又はこの条約の附属議定書のいかなる規定も、武力紛争が生じている締約国の領域内における当該武力紛争又は武力紛争が生じている締約国の国内問題若しくは対外的な問題に直接又は間接に介入することを、その介入の理由のいかんを問わず、正当化するために援用してはならない。

6 この条約及びこの条約の附属議定書を受諾した締約国でない紛争当事者に対するこの条約及びこの条約の附属議定書の規定の適用は、当該紛争当事者の法的地位又は紛争中の領域の法的地位を明示的又は黙示的に変更するものではない。

7 2から6までの規定は、二千二年一月一日以後に採択される追加の議定書に影響を及ぼすものではなく、当該追加の議定書は、この条との関係において、これらの規定の適用範囲を適用し、除外し又は変更することができる。

第二条 他の国際取極との関係

この条約又はこの条約の附属議定書のいかなる規定も、武力紛争の際に適用される国際人道法により締約国に課される他の義務を軽減するものと解してはならない。

第三条 署名

この条約は、千九百八十一年四月十日から十二箇月の間、ニューヨークにある国際連合本部において、すベての国による署名のために開放しておく。

第四条 批准、受諾、承認又は加入

1 この条約は、署名国によつて批准され、受諾され又は承認されなければならない。この条約に署名しなかつたいずれの国も、この条約に加入することができる。

2 批准書、受諾書、承認書又は加入書は、寄託者に寄託する。

3 各国は、この条約のいずれの附属議定書に拘束されることに同意するかを選択することができるものとし、この条約の批准書、受諾書、承認書又は加入書の寄託に際し、この条約の二以上の附属議定書に拘束されることに同意する旨を寄託者に通告しなければならない。

4 締約国は、この条約の批准書、受諾書、承認書又は加入書を寄託した後いつでも、自国が拘束されていないこの条約の附属議定書に拘束されることに同意する旨を寄託者に通告することができる。

5 いずれかの締約国を拘束するこの条約の附属議定書は、当該締約国について、この条約の不可分の一部を成す。

第五条 効力発生

1 この条約は、二十番目の批准書、受諾書、承認書又は加入書が寄託された日の後六箇月で効力を生ずる。

2 この条約は、二十番目の批准書、受諾書、承認書又は加入書が寄託された日の後に批准書、受諾書、承認書又は加入書を寄託する国については、当該国が批准書、受諾書、承認書又は加入書を寄託した日の後六箇月で効力を生ずる。

3 この条約の各附属議定書は、前条3又は4の規定に基づいて二十の国が当該各附属議定書に拘束されることに同意する旨を通告した日の後六箇月で効力を生ずる。

4 二十の国がこの条約のいずれかの附属議定書に拘束されることに同意する旨を通告した日の後に当該附属議定書に拘束されることに同意する旨を通告する国については、当該附属議定書は、当該国が拘束されることに同意する旨を通告した日の後六箇月で効力を生ずる。

第六条 周知

締約国は、武力紛争が生じているか生じていないかを問わず、自国において、できる限り広い範囲においてこの条約及び自国が拘束されるこの条約の附属議定書の周知を図ること並びに、特に、この条約及び当該附属議定書を自国の軍隊に周知させるため自国の軍隊の教育の課目にこの条約及び当該附属議定書についての学習を取り入れることを約束する。

第七条 この条約の効力発生の後の条約関係

1 いずれか一の紛争当事者がこの条約のいずれかの附属議定書に拘束されていない場合においても、この条約及び当該附属議定書に拘束される二以上の紛争当事者相互の関係においては、当該二以上の紛争当事者は、この条約及び当該附属議定書に拘束される。

2 締約国は、第一条に規定する事態において、この条約の締約国でない国又はこの条約のいずれかの附属議定書に拘束されていない国がこの条約又は当該附属議定書を受諾し、適用し、かつ、その旨を寄託者に通告する場合には、当該国との関係において、この条約及び当該附属議定書(自国について効力を生じていることを条件とする。)に拘束される。

3 寄託者は、2の規定により受領した通告を直ちに関係締約国に通報する。

4 千九百四十九年八月十二日の戦争犠牲者の保護に関するジュネーヴ諸条約の追加議定書I第一条4に規定する武力紛争であつてこの条約の締約国が当事者となつているものについては、この条約及び当該締約国が拘束されるこの条約の附属議定書は、次の場合に適用される。

(a) 当該締約国が追加議定書Iの締約国で、追加議定書I第九十六条3に規定する当局が、同条3の規定に基づいてジュネーヴ諸条約及び追加議定書Tの規定を適用することを約束しており、かつ、当該武力紛争に関しこの条約及び当該締約国が拘束されるこの条約の附属議定書を適用することを約束する場合

(b) 当該締約国が追加議定書Iの締約国ではなく、(a)に規定する当局が、当該武力紛争に関しジュネーヴ諸条約の義務並びにこの条約及び当該締約国が拘束されるこの条約の附属議定書の義務を受諾し、かつ、履行する場合。その受諾及び履行は、当該武力紛争に関し、次の効果を有する。

(i) ジュネーヴ諸条約並びにこの条約及び当該締約国が拘束されるこの条約の附属議定書は、紛争当事者について直ちに効力を生ずる。

(ii) (a)に規定する当局は、ジュネーヴ諸条約並びにこの条約及び当該締約国が拘束されるこの条約の附属議定書の締約国の有する権利及び義務と同一の権利及び義務を有する。

(iii) ジュネーヴ諸条約並びにこの条約及び当該締約国が拘束されるこの条約の附属議定書は、すべての紛争当事者を平等に拘束する。

当該締約国及び当該当局は、相互主義に基づき、ジュネーヴ諸条約の追加議定書Iの義務を受諾し及び履行することを合意することができる。

第八条 検討及び改正

1(a) いずれの締約国も、この条約の効力発生の後いつでも、この条約又は自国が拘束されるこの条約の附属議定書の改正を提案することができる。改正案は、寄託者に送付する。寄託者は、改正案をすべての締約国に通報するものとし、改正案を検討するために会議を招集するかしないかについて締約国の意見を求める。過半数の締約国(十八以上の締約国であることを条件とする。)が会議の招集に同意する場合には、寄託者は、速やかにすべての締約国を招請して会議を招集する。この条約の締約国でない国は、オブザーバーとして会議に招請される。

(b) (a)に規定する会議は、この条約及びこの条約の附属議定書の改正を合意することができる。改正は、この条約及びこの条約の附属議定書の場合と同様の方式により、採択され、効力を生ずる。もつとも、この条約の改正は、締約国のみにより採択されるものとし、この条約の附属議定書の改正は、当該附属議定書によつて拘束される締約国のみにより採択されるものとする。

2(a) いずれの締約国も、この条約の効力発生の後いつでも、この条約の附属議定書の対象となつていない種類の通常兵器に関する追加の議定書を提案することができる。提案は、寄託者に送付するものとし、寄託者は、1(a)の規定によりすべての締約国に当該提案を通報する。過半数の締約国(十八以上の締約国であることを条件とする。)が会議の招集に同意する場合には、寄託者は、速やかにすべての国を招請して会議を招集する。

(b) (a)に規定する会議は、出席するすべての国の完全な参加を得て追加の議定書を合意することができる。追加の議定書は、この条約の採択と同様の方式により採択され、この条約の附属議定書となり、第五条3及び4の規定の例により効力を生ずる。

3(a) この条約が効力を生じた日から十年の期間の満了の日までに1(a)又は2(a)の規定に基づき会議が招集されなかつた場合には、いずれの締約国も、寄託者に対し、この条約及びこの条約の附属議定書の適用範囲及び運用について検討するため並びにこの条約の改正案又はこの条約の附属議定書の改正案を検討するため、すべての締約国が招請される会議を招集するよう要請することができる。この条約の締約国でない国は、オブザーバーとして会議に招請される。会議は、この条約及びこの条約の附属議定書の改正を合意することができる。改正は、1(b)の定めるところにより、採択され、効力を生ずる。

(b) (a)に規定する会議においては、この条約の附属議定書の対象となつていない種類の通常兵器に関する追加の議定書の提案についても検討することができる。会議に出席するすべての国は、その検討に完全に参加することができる。追加の議定書は、この条約の採択と同様の方式により採択され、この条約の附属議定書となり、第五条3及び4の規定の例により効力を生ずる。

(c) (a)に規定する会議は、会議後(a)に定める期間と同様の期間が経過するまでに1(a)又は2(a)の規定に基づき会議が招集されない場合に締約国の要請に基づいて新たな会議を招集することの当否につき、検討することができる。

第九条 廃棄

1 いずれの締約国も、寄託者に廃棄の通告を行うことにより、この条約又はこの条約のいずれの附属議定書も廃棄することができる。

2 廃棄は、寄託者が廃棄の通告を受領した後一年で効力を生ずる。ただし、廃棄を行う締約国は、当該一年の期間の満了の時において第一条に規定する事態に巻き込まれている場合には、武力紛争又は占領の終了の時まで、及びいかなる場合においても、武力紛争の際に適用される国際法により保護されている者の最終的解放、送還又は居住地の設定に関連する業務の終了の時まで、この条約及びこの条約の附属議定書の義務に引き続き拘束される。関係地域において国際連合の軍隊又は使節団による平和維持、監視その他これらに類する任務の遂行がある事態において当該事態に関する規定を含むこの条約の附属議定書の廃棄を行う場合には、廃棄を行う締約国は、これらの任務の終了の時まで、当該附属議定書の義務に引き続き拘束される。

3 この条約の廃棄を行う場合には、廃棄を行う締約国が拘束されているこの条約のすべての附属議定書についても廃棄を行うものとみなされる。

4 廃棄は、廃棄を行う締約国についてのみ効力を有する。

5 廃棄は、廃棄が有効となる前に行われた行為について、廃棄を行う締約国がこの条約及びこの条約の附属議定書に基づき負つている武力紛争を理由とする義務に影響を及ぼすものではない。

第十条 寄託者

1 国際連合事務総長は、この条約及びこの条約の附属議定書の寄託者とする。

2 寄託者は、通常の任務を行うほか、すべての国に対し次の事項を通報する。

(a) 第三条の規定によるこの条約への署名

(b) 第四条の規定によるこの条約の批准書、受諾書、承認書又は加入書の寄託

(c) 第四条の規定によりこの条約の附属議定書に拘束されることに同意する旨の通告

(d) 第五条の規定に基づきこの条約及びこの条約の附属議定書が効力を生ずる日

(e) 前条の規定により受領した廃棄の通告及び当該廃棄が効力を生ずる日

第十一条 正文

アラビア語、中国語、英語、フランス語、ロシア語及びスペイン語をひとしく正文とするこの条約及びこの条約の附属議定書の原本は、寄託者に寄託する。寄託者は、この条約及びこの条約の附属議定書の認証謄本をすべての国に送付する。

検出不可能な破片を利用する兵器に関する議定書(議定書I)

人体内に入つた場合にエックス線で検出することができないような破片によつて傷害を与えることを第一義的な効果とするいかなる兵器の使用も、禁止する。

地雷、ブービートラップ及び他の類似の装置の使用の禁止又は制限に関する議定書(議定書U)

第一条 物的適用範囲

この議定書は、この議定書に定義する地雷、ブービートラップ及び他の類似の装置の陸上における使用(海岸上陸、水路横断又は渡河を阻止するための地雷の敷設を含む。)に関するものであり、海又は内水航路における対艦船用の機雷の使用については、適用しない。

第二条 定義

この議定書の適用上、

1 「地雷」とは、土地若しくは他の物の表面に又は土地若しくは他の物の表面の下方若しくは周辺に敷設され、人又は車両の存在、接近又は接触によつて起爆し又は爆発するように設計された弾薬類をいい、「遠隔散布地雷」とは、この1に定義する地雷であつて、大砲、ロケット、迫撃砲若しくはこれらと類似の手段で投射されるもの又は航空機から投下されるものをいう。

2 「ブービートラップ」とは、外見上無害な物を何人かが動かし若しくはこれに接近し又は一見安全と思われる行為を行つたとき突然に機能する装置又は物質で、殺傷を目的として設計され、組み立てられ又は用いられるものをいう。

3 「他の類似の装置」とは、殺傷し又は損害を与えることを目的として設計され、取り付けられた弾薬類及び装置であつて、遠隔操作により又は一定時間の経過後自動的に作動するものをいう。

4 「軍事目標」とは、物については、その性質、位置、用途又は使用が軍事活動に効果的に貢献する物で、その全面的又は部分的な破壊、奪取又は無効化がその時点における状況の下において明確な軍事的利益をもたらすものをいう。

5 「民用物」とは、4に定義する軍事目標以外のすべての物をいう。

6 「記録」とは、公式の記録に登録するため地雷原、地雷及びブービートラップの位置の確認を容易にするすべての入手可能な情報を取得することを目的とする物理的、行政的及び技術的作業を行うことをいう。

第三条 地雷、ブービートラップ及び他の類似の装置の使用に関する一般的制限

1 この条の規定は、次の兵器に適用する。

(a) 地雷

(b) ブービートラップ

(c) 他の類似の装置

2 この条の規定の適用を受ける兵器は、いかなる状況の下においても、文民たる住民全体又は個々の文民に対して攻撃若しくは防御のため又は復仇(きゆう)の手段として使用することを禁止する。

3 この条の規定の適用を受ける兵器は、無差別に使用することを禁止する。無差別に使用するとは、これらの兵器に係る次の設置をいう。

(a) 軍事目標でないものへの設置又は軍事目標を対象としない設置

(b) 特定の軍事目標のみを対象とすることのできない投射の方法及び手段による設置

(c) 予期される具体的かつ直接的な軍事的利益との比較において、過度に、巻添えによる文民の死亡、文民の傷害、民用物の損傷又はこれらの複合した事態を引き起こすことが予測される場合における設置

4 この条の規定の適用を受ける兵器の及ぼす効果から文民を保護するため、すべての実行可能な予防措置をとる。実行可能な予防措置とは、人道上及び軍事上の考慮を含めその時点におけるすべての事情を勘案して実施し得る又は実際に可能と認められる予防措置をいう。

第四条 居住地域における遠隔散布地雷以外の地雷、ブービートラップ及び他の類似の装置の使用に関する制限

1 この条の規定は、次の兵器に適用する。

(a) 遠隔散布地雷以外の地雷

(b) ブービートラップ

(c) 他の類似の装置

2 この条の規定の適用を受ける兵器は、地上兵力による戦闘が発生していない都市、町村その他の文民の集中している地域又は地上兵力による戦闘が急迫していると認められないこれらの地域において使用することを禁止する。ただし、次の場合を除く。

(a) これらの兵器が、敵対する者に属する軍事目標若しくはその者の支配下にある軍事目標に設置され又はこれらに極めて近接して設置される場合

(b) これらの兵器の及ぼす効果から文民を保護するための措置、例えば、警告標識の掲示、歩哨(しよう)の配置、警告の発出又は囲いの設置の措置がとられる場合

第五条 遠隔散布地雷の使用に関する制限

1 遠隔散布地雷は、軍事目標である地域又は軍事目標を含む地域内のみで使用され、かつ、次のいずれかの条件が満たされる場合を除くほか、使用することを禁止する。

(a) 第七条1(a)の規定に基づき当該遠隔散布地雷の位置を正確に記録することができること。

(b) 効果的な無力化のための装置、すなわち、遠隔散布地雷がその設置の所期の軍事目的に役立たなくなると推定される時に当該遠隔散布地雷を無害にし若しくは破壊するように設計された自動作動装置又は遠隔散布地雷が設置の所期の軍事目的に役立たなくなつた時に当該遠隔散布地雷を無害にし若しくは破壊することができるように設計された遠隔制御装置が個々の遠隔散布地雷に使用されていること。

2 文民たる住民に影響を及ぼす遠隔散布地雷の投射又は投下については、状況の許す限り、効果的な事前の警告を与える。

第六条 特定の種類のブービートラップの使用の禁止

1 武力紛争における背信に関する国際法の規則の適用を妨げることなく、次のブービートラップの使用は、いかなる状況の下においても、禁止する。

(a) 外見上無害で持運び可能な物の形態により、爆発生の物質を含むように、かつ、これを動かし又はこれに接近した場合起爆するように設計され及び組み立てられたブービートラップ

(b) 方法のいかんを問わず、次のものに取り付けるブービートラップ又は次のものを利用するブービートラップ

(i) 国際的に認められた保護標章、保護標識又は保護信号

(ii) 病者、傷者又は死者

(iii) 埋葬地、火葬地又は墓

(iv) 医療施設、医療機器、医療用品又は医療用輸送手段

(v) 児童のがん具又は児童の食事、健康、衛生、被服若しくは教育に役立つように考案された製品若しくは持運び可能な物

(vi) 食料又は飲料

(vii) 厨(ちゆう)房用品又は厨(ちゆう)房器具(軍事施設、軍隊所在地又は軍の補給所内にあるものを除く。)

(viii) 宗教的性質を有することの明らかな物

(ix) 国民の文化的又は精神的遺産を構成する歴史的建造物、芸術品又は礼拝所

(x) 動物又はその死体

2 過度の傷害又は無用の苦痛を引き起こすように設計されたブービートラップの使用は、いかなる状況の下においても、禁止する。

第七条 地雷原、地雷及びブービートラップの位置の記録及び公開

1 紛争当事者は、次のものの位置を記録する。

(a) あらかじめ計画し、敷設したすべての地雷原

(b) 大規模に、かつ、あらかじめ計画の上ブービートラップを設置したすべての地域

2 紛争当事者は、設置した他のすべての地雷原、地雷及びブービートラップの位置を確実に記録するように努める。

3 1及び2に規定するすべての記録は、紛争当事者が保持する。紛争当事者は、次のことを行う。

(a) 現実の敵対行為の停止の後直ちに、次の(i)のことを行うこと及び次の(ii)又は(iii)のいずれかのことを行うこと。

(i) 地雷原、地雷及びブービートラップの及ぼす効果から文民を保護するため、すベての必要かつ適切な措置(当該記録の利用を含む。)をとること。

(ii) 紛争当事者の兵力が敵対する紛争当事者の領域内に存在しない場合には、相互に及び国際連合事務総長に対し、敵対する紛争当事者の領域内の地雷原、地雷及びブービートラップの位置に関し自己の保有するすべての情報を利用可能にすること。

(iii) 紛争当事者の兵力が敵対する紛争当事者の領域から完全に撤退した時に、敵対する紛争当事者及び国際連合事務総長に対し、敵対する紛争当事者の領域内の地雷原、地雷及びブービートラップの位置に関し自己の保有するすべての情報を利用可能にすること。

(b) 国際連合の軍隊又は使節団が関係地域において任務を遂行している場合に、次条に規定する者に対し、同条に規定する情報を利用可能にすること。

(c) 可能な限り、相互の合意によつて、特に敵対行為の停止についての合意において、地雷原、地雷及びブービートラップの位置に関する情報の公開について定めること。

第八条 地雷原、地雷及びブービートラップの及ぼす効果からの国際連合の軍隊及び使節団の保護

1 紛争当事者は、関係地域において国際連合の軍隊又は使節団が平和維持、監視その他これらに類する任務を遂行している場合において、当該国際連合の軍隊又は使節団の長が要請するときは、可能な限り次のことを行う。

(a) 関係地域にあるすべての地雷及びブービートラップを除去し又は無害なものにすること。

(b) 国際連合の軍隊又は使節団がその任務を遂行する間、当該国際連合の軍隊又は使節団を地雷原、地雷及びブービートラップの及ぼす効果から保護するために必要な措置をとること。

(c) 関係地域の国際連合の軍隊又は使節団の長に対し、当該地域内の地雷原、地雷及びブービートラップの位置に関し自己の保有するすべての情報を利用可能にすること。

2 国際連合の事実調査使節団が関係地域において任務を遂行している場合には、紛争当事者は、同使節団に対し保護措置をとる。ただし、同使節団の規模が大きいため十分に保護措置をとることができない場合を除く。この場合には、紛争当事者は、同使節団の長に対し、当該地域内の地雷原、地雷及びブービートラップの位置に関し自己の保有する情報を利用可能にする。

第九条 地雷原、地雷及びブービートラップの除去の際における国際協力

現実の敵対行為の停止の後、紛争当事者は、紛争中に設置された地雷原、地雷及びブービートラップを除去し又は無害なものにするため必要な情報並びに技術的及び物的援助の提供(適当な状況の下においては、共同作業を含む。)に関し、紛争当事者間の合意の達成並びに適当な場合には他の国及び国際機関との合意の達成に努める。

地雷、ブービートラップ及び他の類似の装置の使用の禁止又は制限に関する議定書(議定書U)の技術的事項に関する附属書

記録に関する指針

議定書Uに基づいて地雷原、地雷及びブービートラップの位置を記録する義務が生ずる場合には、次の指針を考慮するものとする。

1 あらかじめ計画された地雷原及び大規模な、かつ、あらかじめ計画されたブービートラップの設置に関しては、次のことを行う。

(a) 地雷原又はブービートラップの設置された地域の範囲を示す地図、図表又は他の記録を作成すること。

(b) 一の照合点を原点とする座標により、並びに当該一の照合点との関係から地雷及びブービートラップの存在する地域の範囲を推定することにより地雷原又はブービートラップの設置された地域の位置を特定すること。

2 他の地雷原、地雷及びブービートラップの設置に関しては、可能な限り、地雷原、地雷及びブービートラップの存在する地域が識別されるよう1の規定の例により関連情報を記録する。

焼夷(い)兵器の使用の禁止又は制限に関する議定書(議定書V)

第一条 定義

この議定書の適用上、

1 「焼夷(い)兵器」とは、目標に投射された物質の化学反応によつて生ずる火炎、熱又はこれらの複合作用により、物に火災を生じさせ又は人に火傷を負わせることを第一義的な目的として設計された武器又は弾薬類をいう。

(a) 焼夷(い)兵器は、例えば、火炎発射機、火炎瓶、砲弾、ロケット弾、擲(てき)弾、地雷、爆弾及び焼夷(い)物質を入れることのできるその他の容器の形態をとることができる。

(b) 焼夷(い)兵器には、次のものを含めない。

(i) 焼夷(い)効果が付随的である弾薬類。例えば、照明弾、曳(えい)光弾、発煙弾又は信号弾

(ii) 貫通、爆風又は破片による効果と付加的な焼夷(い)効果とが複合するように設計された弾薬類。例えば、徹甲弾、破片弾、炸(さく)薬爆弾その他これらと同様の複合的効果を有する弾薬類であつて、焼夷(い)効果により人に火傷を負わせることを特に目的としておらず、装甲車両、航空機、構築物その他の施設のような軍事目標に対して使用されるもの

2 「人口周密」とは、恒久的であるか一時的であるかを問わず、都市の居住地区及び町村のほか、難民若しくは避難民の野営地若しくは行列又は遊牧民の集団にみられるような文民の集中したすべての状態をいう。

3 「軍事目標」とは、物については、その性質、位置、用途又は使用が軍事活動に効果的に貢献する物で、その全面的又は部分的な破壊、奪取又は無効化がその時点における状況の下において明確な軍事的利益をもたらすものをいう。

4 「民用物」とは、3に定義する軍事目標以外のすべての物をいう。

5 「実行可能な予防措置」とは、人道上及び軍事上の考慮を含めその時点におけるすべての事情を勘案して実施し得る又は実際に可能と認められる予防措置をいう。

第二条 文民及び民用物の保護

1 いかなる状況の下においても、文民たる住民全体、個々の文民又は民用物を焼夷(い)兵器による攻撃の対象とすることは、禁止する。

2 いかなる状況の下においても、人口周密の地域内に位置する軍事目標を空中から投射する焼夷(い)兵器による攻撃の対象とすることは、禁止する。

3 人口周密の地域内に位置する軍事目標を空中から投射する方法以外の方法により焼夷(い)兵器による攻撃の対象とすることも、禁止する。ただし、軍事目標が人口周密の地域から明確に分離され、焼夷(い)効果を軍事目標に限定し並びに巻添えによる文民の死亡、文民の傷害及び民用物の損傷を防止し、また、少なくともこれらを最小限にとどめるため実行可能なすべての予防措置をとる場合を除く。

4 森林その他の植物群落を焼夷(い)兵器による攻撃の対象とすることは、禁止する。ただし、植物群落を、戦闘員若しくは他の軍事目標を覆い、隠蔽(ぺい)し若しくは偽装するために利用している場合又は植物群落自体が軍事目標となつている場合を除く。

(右条約の英文)〔省略〕