「恐怖と欠乏からの自由」を含意するものとして国連開発計画(UNDP)により提唱された、ヒューマンセキュリティ(human security)という概念は、時代状況の変化と共にその意味するところが拡大されてきました。今日では、この概念は人間諸個人にとっての安心と安全とはなにかという観点に立って、人間ひとりひとりの生存、生活、尊厳を脅かす様々な課題への取り組みにかかわるものと理解されるようになっています。
このように拡大されたヒューマンセキュリティの研究領域に対処するために、人と人の関係、人と社会の関係、人と自然の関係が取り上げられつつあります。人類に便益をもたらしその福祉に寄与すると考えられてきた科学技術にも、人類の安心・安全を脅かす事態をもたらす可能性があることが明らかになりました。
人間的な安心・安全を目指す生存システムの構築、人間と人間との、また人間と自然との安心・安全な共生システムの構築をはかるためには、人間の在り方、人間存在の根本的規定を「共に生きること」の実現を図る立場に立って考え直すことが必要です。
ヒューマンセキュリティ・サイエンス学会は、安心感、安全性の本質を見極め、安心して暮らすことのできる幸福な社会のあり方を見出だすための学際的研究を推進することを目指します。そのために、ヒューマンセキュリティに関する個別研究「ヒューマンセキュリティ・スタディーズ」と学際学としてのヒューマンセキュリティ・サイエンスの研究を交流させ、またそれらの統合を目標とした新しい学問領域の構築をはかり、ヒューマンセキュリティの研究と教育を促進させることを目的としています。
研究領域とキーワード
1)人文科学:哲学、倫理学、心理学、文化人類学、文学
安心感とは、安心・安全の理論、公共哲学
生命倫理、情報倫理、環境倫理
個人感情、共同感情
精神活動と科学技術との調和、身体性
地域文化とその共生、文化の多様性
2)社会科学:社会学、社会福祉学、法学、政治・経済学、政策科学
社会保障、コミュニティ論、老年学、ジェンダー論
国家安全保障、人道・人権、社会的不平等、格差問題
法規制、規制科学、公共政策、社会技術
生活空間、住い、都市論
リスク認知、安全ネット
3)自然科学
科学技術:自然科学、理工学、生命科学、情報学、技術学
自然災害・地球変動への対処、地球環境保全、公害抑制
安心・安全に資する科学技術、人工物の安全性、科学技術の安全性
ヒューマン・テクノロジー、人間・自然共生
自然学、風土論
4)学際研究領域、複合領域:
安全学、地域研究、歴史研究、コミュニケーション、教育、
その他の関連分野