■ 共同研究プロジェクトの概要 ■
本構想の共同研究プロジェクトは、現代社会におけるエネルギー・資源問題および環境破壊問題を背景に、人類の社会活動に必須のエネルギーを、究極の環境保全を想定して最適なエネルギー変換過程を経て供給するための基礎的・体系的な研究を行うことを目的としている。本学大学院工学研究科の各専攻では、この分野に関して個別に大きな研究業績を挙げている研究者が多く存在する。このため、これらの基礎研究を体系化し、さらに学外の産官学の研究機関と共同して、資源有効利用とその貯蔵や輸送、各種エネルギー変換システムの高効率化、ゼロエミッション化のためのエネルギー変換過程の物理・化学解析,さらに資源の起源からシステム利用全体にわたる最適化ライフサイクルアセスメントを行う。このように、これからの高度文明社会を支えるエネルギーと環境保全のための総合・学際的科学技術分野を本共同研究プロジェクトにおいて遂行することは、次世代技術開発の発展に対して極めて有意義であると考える。
上記の研究プロジェクトを実施するために、大学院工学研究科を母体としたエネルギー変換研究センターを設置し、学外との共同研究の拠点とする。
■ 共同研究の体制 ■
本共同研究プロジェクトの各研究グループの主要な研究内容は、本学大学院工学研究科の電機系、機械系および化学系の研究者が遂行する。このほか,各分野での卓越的な研究成果を挙げている以下の学外研究機関との共同研究体制を整え、体系的・総合的な連携研究を行う。
①京都大学大学院エネルギー科学研究科(天然ガス機関),京都大学大学院工学研究科 (プロトン伝導性固体電解質),神戸大学大学院自然科学研究科(吸収式冷凍機),(株)前川製作所(冷凍・空調機),(株)フェローテック(熱電交換)
②独立行政法人交通安全環境研究所(排気微粒子の低減),岡山大学工学部(流体挙動解析),(株)堀場製作所(排気ガス・微粒子計測)
③京都大学大学院エネルギー科学研究科(水素貯蔵),東北大学流体科学研究所(電磁知能性流体)
④財団法人日本自動車研究所(システムLCA評価),独立行政法人国立環境研究所(エミッション総合評価)
このほか,エンジンシステム分野で米国Univeersity of Wisconsin-Madison, Engine Research Centerと,燃料電池およびシステム評価分野で米国University
of California-Irvine, Advanced Power and Energy Centerと,数値燃焼解析分野で英国Imperial
Collageと,さらに磁性流体分野で中国の北方交通大学-磁性液体研究所とそれぞれ研究連携を図り,国際的3極研究ネットワークを構成する予定である.
エネルギー変換機器の最適化LCA評価研究
■ 年度別の具体的研究内容 ■
▶2003年度
初年度はエネルギー変換研究センターに設置する装置と設備の調整,ならびに次の研究を行う.ここで,各番号は4つの研究グループ,すなわち①高効率エネルギー変換システム研究,②ゼロエミッション研究,③燃料サイクルとエネルギー貯蔵研究,④エネルギー変換機器の最適化LCA評価研究にそれぞれ対応している.なお,各グループの研究は互いに有機的な連携をとりながら推進する.
① ディーゼル機関の噴霧燃焼解析による排気生成物の調査,エンジン排熱諸元の整理と回収用熱交換器要素の基本設計,燃料電池用プロトン導電性固体電解質の作製
② 低濃度排出化学種の高精度測定法の検討,排出微粒子の物理的特性の評価手法の検討
③ 電磁流体による熱輸送機構の解明,電気二重層キャパシタの充放電特性と適合回路方式の検討
④ ハイブリッドシステムとしてのエネルギー変換機器・周辺機器の組合せ法の検討
①
▶2004年度
① 低排気エミッション化のための燃料設計による新たな合成燃料を用いたディーゼル機関とガス機関の性能調査,プロトン伝導に特化した量子化学計算と分子動力学法シミュレーションの融合(第一原理MD)プログラム作成,多重効用化によるコンパクト型排熱利用吸収冷凍機の高効率化の検討
② 燃焼生成物の生成過程の化学反応動力学解析,排出微粒子の粒径・数密度測定法の調査,微粒子の動力学解析手法の考察,排気触媒内部のガス流動機構の解析
③ 合成燃料と含酸素燃料の製造過程の燃料サイクル解析,電磁流体を用いた磁気シールに関する研究とエネルギー変換機器への応用
④ エンジンシステム・燃料電池・電気モータ系ハイブリッドを想定したLCA評価法の検討
▶2005年度
① 水素ディーゼル機関の燃焼性能と排気性能の究明,最適熱交換要素に即した熱電交換要素の基本設計,燃料電池用プロトン伝導体への分子動力学シミュレーションの応用,チタン系水素貯蔵合金内の水素挙動の電気化学的測定
② 排出化学種・微粒子の高精度測定法の開発と非定常計測の実施,燃焼過程の非定常乱流多次元解析による燃焼生成物の算定,燃料電池触媒内部の流体挙動解析
③ 燃料サイクルを用いた水素製造過程の解析,電磁流体を用いた排熱回収システムの開発,電力制御システムの高効率化・最適制御の検討
④ エンジンシステム・燃料電池・キャパシタ・電気モータ系ハイブリッドを想定したLCA評価法の検討
▶2006年度
① 合成燃料・含酸素燃料を用いたエンジンシステムの排気性能の限界究明,熱電交換スタックの試作と実証実験,システム最適制御法の開発,プロトン伝導性固体電解質を用いる燃料電池の試作と評価,コンパクト型吸収冷凍機内不凝集性ガス収集器の最適設計
② エンジンシステムの超低公害化の限界究明,排気触媒と燃料電池触媒の最適化解析,超微粒子の時空間構造の光学的計測手法の確立
③ バイオマスによる燃料合成のCO2解析,ハイブリッド化のための電圧バランサ回路等,周辺回路の検討
④ エンジンシステム・燃料電池・キャパシタ・電気モータ系,さらに排熱利用空調機システムを含むハイブリッドシステムのLCA評価法の検討
▶2007年度
最終年度は研究成果のまとめと,特に④エネルギー変換機器の最適化LCA評価研究を重点的に行う.
① 燃料電池正極,負極電極特性の解析と電極特性の向上,プロトン伝導材料の設計と総括,高耐久性・軽量型水素貯蔵材料の実用化開発
② エネルギー変換機器から排出する有害成分の環境影響調査
③ ハイブリッドシステムにおけるキャパシタ特性評価
④ エンジンシステム用燃料と水素の製造過程における燃料サイクルの総合評価を行い,最終的にエンジンシステム・燃料電池・キャパシタ・電気モータ系,さらに熱電交換と熱輸送技術を含む排熱利用空調機システムを包含する全ハイブリッドシステムのLCA評価を行う