14 多原子分子

原子価結合法,分子軌道法を一般の多原子分子に適用する方法について述べる。

14.1 水分子に対する原子価結合法

酸素原子 (1s)2 (2s)2 (2px)2 (2py)(2pz)
1s, 2s は結合に関与せず
水素原子 x 方向 : sH, y 方向 : sH'
化学結合

14-1
14-2
結合角 90o 実測値 H2O 104.5o
H2S 92.2o
H2Se 90.9o
H2Te 89.5o
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分子構造の予測は比較的簡単だが,原子数が多くなると計算が複雑になる欠点がある。

14.2 水分子に対する分子軌道法

14-3
14-4
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軌道の対称性

yz 面に対称で xz 面に対称 1s, 2s, 2pz, h1
yz 面に対称で xz 面に反対称 2py, h2
yz 面に反対称で xz 面に対称 2px
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LCAO 分子軌道
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対称性の違う軌道間の重なり積分,共鳴積分はゼロ
永年方程式の形
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複雑な分子については群論の助けをかりると簡単化できる場合がある。
核の配置を変えてエネルギーの低いところを探すので分子構造の予測がしにくいという欠点があるが, VB 法に比べて計算が単純である。

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14.3 水分子の局在分子軌道

VB 法的考え方を MO に取り込む
局在分子軌道

(14.7)      f(I)  oc  px + csH
(14.8)      f(II)  oc  py + csH'
これを利用して全体の分子軌道をつくる
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pzf(I), f(II) と対称性が違う
f(I) と f(II) とは重なりがほとんどない
よって f(I), f(II), pz は独立
基底状態の電子構造 O(1s)2 (2s)2 (2pz)2 [O(2px)+ H(1s)]2 [O(2py)+ H'(1s)]2

演習問題

  1. 原子価結合法によって水分子を考察する。
    1. どのような結合が生じていると考えられるか。
    2. 分子構造はどのように予測されるか。
  2. 分子軌道法によって水分子を考察する。適当な座標を選べば永年方程式が次のような形になることを示せ。
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  3. 分子軌道法によって水分子を考察する。
    1. 局在分子軌道とはとのような考え方か。
    2. 局在分子軌道の考え方を用いると水分子の基底状態の電子構造はどのように書けるか。
  4. アンモニア分子について
    1. 原子価結合法によって分子構造を予測せよ
    2. 局在分子軌道の方法によると,基底状態の電子配置はどのように表されるか。