研究紹介Research

生物ソナーグループ Bio-soner Group

行動グループ Behavior Group

神経生理グループ Neurophysiological Group

心理グループ Phychology Group



生物ソナーグループ Bio-soner Group

−野性コウモリが繰り広げる大規模空間ナビゲーション戦略を解明しよう−


運動範囲に制限のない広大な野外では,コウモリは体長数 mmの微小な飛翔昆虫をエコーロケーション(超音波パルスを放射し,そのエコーを聴くことで周囲環境の把握や標的情報を取得すること)により検知し,ダイナミックに飛行をしながら正確に獲物を捕らえています.このような野性コウモリの“生物本来の能力”に基づいたユニークなソナー行動は,野外の広大な空間でしか繰り広げられません.そこで本研究では,3次元空間で自由自在に飛翔する野性コウモリに対する野外音響計測システムを構築し,野性コウモリの多彩な行動に隠された生物特有の賢いソナー戦略の解明を目指しています.具体的には,川沿い約20 m四方の広大なエリアにて3次元的に大規模なマイクロホンアレイ(図1)を構築することで,野性のアブラコウモリの飛行ルートおよび超音波パルスの放射方向の3次元同時計測を行っています.さらに現在は,野外計測で得られた音響データを定量的に分析する新たな手法として,“数理モデリング”に着目し,コウモリの飛行と音響センシングの複雑な相互関係を実験と数理モデリングの双方の観点から解明しようという新たな研究も行っています.野性コウモリのソナー行動を数理モデルとして定式化することができれば,工学分野へ具体的な超音波センシング及びナビゲーションアルゴリズムとして提案することも可能になると考えています.

−コウモリの混信回避の秘密を解明しよう−


   コウモリは超音波を発し、その反響音(エコー)を聞くことにより、周囲環境を把握 し飛行しています。コウモリが発する超音波は種ごとに似通っているにもかかわらず 、洞窟などの狭くて暗い空間においても衝突することなく飛行を実現させています。 たくさんのコウモリが飛行する環境(=音響的な混信環境)から、どのようにして自 身に必要な音のみを聞き分けているのか…私たちのグループはコウモリが持つ優れた 超音波信号の分離・聴取能力に着目し、時間長や周波数などの音響面から検討を行っ ています。コウモリの混信回避能力を検討するための行動実験として、2種類の観点 から研究を進めています。(1)観測室内で複数のコウモリを同時に飛行させ、個々 のコウモリが発する超音波の音響面の検討を行う。(2)観測室内にスピーカを設置 し、コウモリの超音波に似た音の再生環境下で飛行させ、コウモリが発する超音波の 音響面の検討を行う。コウモリの頭部には自作の小型ワイヤレスマイクロフォンを搭 載し、コウモリが実際に聞いている音をリアルタイムで録音できるような実験系を構 築し、検討を進めています。これらの実験を並行して行うことで、混信に強い信号・ 受信技術等、コウモリの持つ優れた混信回避能力を解明し、通信やロボットの群制御 の面等、工学分野での新たな知見を得ることを目指しています。

−障害物環境下で飛行するコウモリの"音による視線"計測−


ソナーによるセンシングでは,時間的に離散な空間把握を強いられ,さらに,超音波パルスの指向性(“音による視野”)により一度のパルス放射で把握できる領域が制限されます.特に,簡便なデバイス構成のため,単送波器(口,又は,鼻)でセンシングを実現させるコウモリにとって,飛行状況に応じた適切な方向へ“音による視線”(超音波パルスの放射方向)を選択することは,最も重要なソナー戦略の一つであると考えられます.そこで,障害物環境下で飛行するコウモリのパルスの放射方向や,センシングのタイミングから,コウモリの効率の良い周囲空間のスキャニングプロセスを解明し,アルゴリズム化を図る研究が行われています.これに加えて,先行研究で報告されている,我々ヒト等の視覚優位動物を用いた視線計測と,コウモリのパルス放射方向の計測について比較・追究することで,音によるセンシングの優位点,本質を理解する検討も進められています.

−標的に対するコウモリ独自の戦略から学ぼう−


コウモリが微小な昆虫を捕食する”採餌行動”の研究においては,野外だけでなく室内での実験も行われております.具体的には,観測室内に糸を取り付けた蛾を天井に吊るし (蛾は糸の長さの範囲内で移動が可能),コウモリに標的の検知・追尾を行わせます.観測室内には31 chのマイクロホンアレイと2台の高速度ビデオカメラを設置します。これにより,コウモリが不規則に移動する標的に対してどのような方向 (視線)・範囲 (視野) で超音波パルスを放射しているかだけでなく,コウモリと標的の飛行関係 (動き) を知ることができます.また,コウモリに2匹の蛾を提示することで標的の選択を行わせ、標的から得られるどのような情報が選択要因となったのかについての検討も行われております.これまでの研究成果として、コウモリは標的の検知・追尾を行う際に、状況に応じてアクティブにセンシング方法を変えていることが明らかになってきました。更なるコウモリ独自の移動標的センシングの解明に向け,最近では蛾を模擬した”擬似蛾”を製作し,コウモリが標的から得る情報を制御することでより緻密な実験に取り組んでいます.

−コウモリが聴いている音を実際に聴いてみよう−

コウモリのエコーロケーションに関する研究は着実に進んでおり, コウモリの超音波パルスは,目的地への移動や獲物の捕獲など様々な行動目的に合わせてより効果的な構造へと柔軟に変化させていることが行動実験から明らかになっています.しかし, 現状の研究課題として, 音響情報のみで周囲の状況をイメージングする機構に関する研究がほとんど未解明であることが挙げられます. 一方, 視覚障害者の中には周囲の障害物を視覚的手掛かりに頼ることなく知覚できることが報告されています.このことから, ヒトにもコウモリのエコーロケーションに似た能力が備わっているのではないかという仮説が立てられています.そこで物体の形状や材質の弁別を行う際に必要な立体音響空間情報を獲得する装置として作成されたものとしてDummy headがあります.これを使いコウモリの生物ソナー機構の研究に携わっている研究者がエコーロケーションを体験し,音響イメージの言語化や検知能力の計測を通じて, コウモリの生物ソナー機構解明の新たな知見獲得を最終的な目的としています.本研究は産業技術総合研究所(AIST)と共同で行っています.
AISTの研究内容はこちらのリンクをご参照ください
(http://staff.aist.go.jp/ashihara-k/pan_top.html)
Dummy headについて詳しくはこちらをご参照ください
(http://www.geocities.jp/miniature_dummyhead/index.html)
Dummy headによる収録音はこちらからヘッドフォンまたはイヤフォンでご視聴ください
(https://www.youtube.com/watch?v=xNsNcInNEzA)

−“音でまわりを見るコウモリ”に音の使い方を学び,
                                         ロボットのセンシングシステムへ応用しよう−

私たちの研究室ではこれまでに,エコーロケーション飛行中のコウモリの音声計測を行うことで,現在の工学ソナー技術の発想にはなかった,コウモリ独自のユニークな超音波センシングの使い方を明らかにしてきました.コウモリは,周囲環境に応じて超音波を照射する方向(音による“視線”)や,音の大きさ・周波数構造などを合理的にアクティブコントロールすることで効率良い空間把握を実現させ,タスク(獲物の追尾や,障害物回避)や地形環境に左右されることなく柔軟で優雅な飛行を実現させていると考えられます.さらに,コウモリはこれらのセンシングを“鼻または口”(スピーカー)と“両耳”(2つのマイクロホン),および,豆粒ほどの大きさの“脳”(CPU)と非常に簡潔なセンシング機構で実現させています.そこで,現在私たちの研究チームでは,これまでのコウモリの計測に加え,あらたに『コウモリのセンシング機構・システムを真似た自律走行ロボット』の開発に取り組んでいます.既存の人工ソナー技術に“コウモリの生きものらしいセンシングのテクニック・アイデア”を実装することでどのような効果が得られるのか?今まで全く行われてこなかった評価・検証実験を行うと共に,コウモリのセンシングのアイデアの真髄に迫るコウモリとの比較・検証実験も行っています.最終的には,自律行動型ロボット用の空間知覚センシングシステムとして汎用性のあるアイデアとして提供するために,コウモリのセンシング戦略の数式化,アルゴリズム化を図っていきたいと考えています.
コウモリにみられる,“リアルタイムな周囲状況の判断”に優れた “チープデザイン設計”による“スマートなアクティブセンシングシステム” の実現を目指し,日夜研究が推し進められています.


−デバイスからコウモリの超音波パルスを放射してみよう−


イメージ サーモホン(Thermophone)とは,金属薄膜中に生じるジュール熱の時間変化により薄膜表面付近の微小空気塊を膨張・収縮させ,音波を発生させる電気音響変換素子です.機械的な振動を伴わず,また簡単な構造で小型化できるため,広帯域の超音波音源としての利用が期待されます.現在,空中の物体検知用トランスデューサーとしては,共振を利用した狭帯域の圧電素子が広く利用されているが,物体検知や測距に加えて,物体の形状を高精度で把握するために,広帯域の素子を用いて高い時間分解能や周波数情報を利用した計測が望まれます.そこで広帯域な周波数特性を持つサーモホンは新たな広帯域の超音波音源として近距離における空中センサに利用できると考えられます. また理論上サーモホンは広帯域の周波数特性を有しているため,コウモリのエコーロケーションパルスの再現が可能である事が期待できます.これにより,実際に空中センシングを行うコウモリの生物ソナーの技術を人工ソナーへ応用し,新たな音響定位システムの構築が期待できます.


行動グループ Behavior Group

−視覚, 聴覚統合現象からのアプローチ−


   錯覚現象には視覚と聴覚が統合されておこる現象があります.その一つに光が1回点滅し,同時に音が2回提示された場合,光が2回に知覚されるダブルフラッシュ現象が報告されています.これは聴覚情報による視覚情報の誘発現象であり,脳で視聴覚統合が起きる時に聴覚情報が視覚情報より時間分解能が優れているため,狭い時間幅を知覚することができると考えられています. 実験では明確に1回,曖昧,明確に2回と判断された3種類の聴覚刺激(トーンバースト)と明確に1回,曖昧,明確に2回と判断された3種類の視覚刺激(白色LED)の組み合わせ刺激を用いました。その際、時間分解能の優劣に関わらず、聴覚情報による視覚情報の誘発現象が生じるかどうかを確認することを目的とします. 今後の展望として,今回は時間分解能の優劣のため生じる錯覚現象と空間分解能の優劣のため生じる錯覚現象を比較し,共に錯覚が生じやすいヒト,一方の現象でのみ錯覚が生じやすいヒト,共に錯覚が生じにくいヒトの間で特徴が見られないかをMRIを用いて実験していこうと考えています.

−サルの音声コミュニケーションとその脳内機構の解明−


ニホンザルは聴覚の研究で人間との比較対象として研究されています.また,今までこの研究室では,ニホンザルを使用した実験において聴覚応答に対する反応時間の計測を行っていませんでした.本実験の目的として,ニホンザルを用いた実験による反応時間の計測方法の確立と計測した反応時間の妥当性を図るため,ノイズバーストの連続音と断続音の音圧変化による弁別閾値測定(実験1)と時間変化における弁別閾値測定(実験2)を行いました.GO/NOGOオペラント課題を用いて,連続音と断続音の弁別訓練を行いました.また,2つの刺激の連続体を刺激としてテストを行いました.その結果,GO反応率では連続体との相関があまり観測されず個体差が大きいことが分かりました.しかし,反応時間では個体間の差が存在したにもかかわらず,統計的に同じ物理量の変化によって有意差が生じました.これらの結果より,反応時間の計測方法の確立ができ,反応時間を指標として動物の心理的閾値を計測することが可能であると考えられます.


神経生理グループ Neurophysiological Group

−スナネズミを用いた聴覚増幅機構に関する探究−


   スナネズミ(Meriones unguiculatis)はコミュニケーション音声を用いることが分かっています. スナネズミは主に他個体とのコミュニケーションでは超音波領域に属する音声を使いますが, 超音波領域の閾値はそれよりも低周波領域の閾値より高いことが分かっています. つまりスナネズミの耳はコミュニケーション音声が聞こえにくいのです. しかしコミュニケーション音声はスナネズミにとって意味を持つ音声なので, よく聴く必要があります. 例えば他個体の音声に対して集中して聴いているのではないかということが考えられます. そこでスナネズミが集中して音を聴くと, 音を脳に伝える器官である蝸牛の増幅機構が働くのではないかと考えました. 音に対して集中した際の蝸牛における増幅機構を検討することを目的とし, 実験を行いました. まずスナネズミに音に集中させるためには音に意味を持たせ, 音に罰を関連付ける訓練を行うことにより, スナネズミが音に対して何らかの行動をするようになると考えました. その時スナネズミは音に対して意味を持ったとみなすことができ, 音に対して集中したと定義しました. 蝸牛の働きに対して, 蝸牛マイクロフォン電位(Cochlear microphonics: CM)を指標として増幅機構を調べました. 蝸牛マイクロフォン電位とは内耳の聴覚器官である蝸牛に到達した音や音声の周波数,強さ,時間の3つの情報を忠実に再現している電気的な信号です.

       

−スナネズミの内耳機能に関する研究−



   スナネズミは聴覚損失モデル動物として広く研究に用いられています.高レベルの騒音曝露は内耳に損傷を与え,聴覚損失を引き起こします.騒音曝露により一時的に聴覚を損失することを一過性閾値変動(TTS)という.本実験の目的は騒音曝露を用いて,スナネズミの内耳機能を評価することです.評価指標としては蝸牛マイクロフォン電位(Cochlear microphonics: CM)と蝸牛神経複合活動電位を用いた.CMは蝸牛の基底膜上に存在する外有毛細胞の受容器電位を起源とする電気信号です.CAPは基底膜上の内有毛細胞にシナプス結合している複数の蝸牛神経の発火の総和の活動電位です.これらの二種類の電気信号はスナネズミの頭頂部から蝸牛神経複合核を目指して挿入された電極を通して記録されました.被験体は広帯域ノイズ(1~52 kHz)で曝露されました.さらに,一時的な聴覚損失の程度と回復過程を観るために,騒音曝露前と曝露後にトーンバーストを被験体に提示し,応答波形を記録した.トーンバーストの周波数は11種類,音圧レベルは3種類存在します.すべての音刺激は被験体の外耳から10cmの位置に固定されたスピーカーから提示されました.CMにおいては4 kHzが,CAPは8 kHzに特徴的な振幅値の大きな減少が観られました.

−近赤外光を用いた神経活動の一時的な抑制−


   近赤外レーザをニューロンに照射することによって,そのニューロンの活動を一時的に抑制することができることが明らかになってきました.この手法では従来の薬品や物理的な損傷によって活動を不可逆的に抑制する手法とは違い,レーザ照射後十数分で神経活動が回復させることができます. 当グループではこの抑制手法を用いて,聴覚系の各部位間,または各部以内でどのような機能的なつながりがあるのかを調べています.具体的には,スナネズミのある部位で神経活動を記録し,その際に別の部位の神経活動を近赤外レーザで抑制した場合に,記録を行っている神経の活動に変化が観測されれば,この2部位間の機能的な関わりを推測することが可能になります. 例えば, 一次聴覚野を近赤外レーザーによって抑制したとき, 蝸牛の働きはどう変化するのか, など2部位間の機能的な繋がりを研究しています.

−光刺激を用いた蝸牛神経を直接刺激する補聴器の開発−


   私たちの研究室では, 赤外光を蝸牛神経に照射することで活動電位を誘発する研究を行っています. 先行研究で, 赤外光を神経に照射することで活動電位が誘発されることが報告され, 電気刺激に代わる新たな刺激法として注目されています. 電気刺激で神経を刺激する際には刺激源である電極を組織に直接接触させる必要がありますが, 赤外光を用いた光刺激は刺激源である光ファイバーを組織に直接接触させること無く神経を刺激することができます. 私たちは赤外光の非接触的に神経を刺激することのできる性質を活かして, 蝸牛神経を直接刺激する補聴器を開発することを目標としています. 従来用いられている蝸牛神経を電気刺激によって刺激する人工内耳は, 体外だけでなく体内にも機器を埋め込む必要があり, 侵襲性の高い手術を行う必要ですが, 赤外光を用いて蝸牛神経を刺激する補聴器は光ファイバーを組織に接触させる必要がないので, 手術すること無く蝸牛神経を刺激することができます. 私たちのスナネズミを用いた研究で, 赤外光を用いる刺激法は伝音性難聴に対して有効であること, 蝸牛神経を経鼓膜的に刺激することが可能であることが分かり, 蝸牛神経を直接刺激する補聴器の実用化に向けて研究を行っています.

−スナネズミを用いた言語学習の研究−



   社会的集団で生活し, 意思疎通をコミュニケーションで行うヒトにとって言語学習は極めて重要なものです, しかし言語学習に関する神経生物学的研究は未だに未解明な点がたくさんあります. 身近な例としては, 大人と子供では言語学習能力が極端に違うが、その違いが現れるはっきりした原因はわかっていないことなどがあります. この理由として, 言語学習をする動物が少ないため, 言語学習のモデル動物が確立していないことなどが挙げられます. 本実験ではげっ歯類であるスナネズミが言語学習をする動物であるか否かを調べています. スナネズミの言語学習を検討する手段として, 発声に大きく関わる下喉頭神経を切除し, 変わってしまった声をスナネズミが意図的に元に戻すことが可能かどうかから判断しています(左図). また, スナネズミが発声を可塑的にコントロールすることができた場合, その発声コントロールが聴覚にどれほど依存するかを調べる必要性があります. そこで今後の展望として, 難聴にした個体でも同じように発声をコントロールできるかを調べていきたいと考えています.




心理グループ Phychology Group


−Sound symbolismと特定脳部位に関する相関関係−


  音には音そのものがある意味や印象を有するという現象であり,これをSound symbolismといいます.これまで,Sound symbolismは心理学や言語学の分野において研究がなされてきました.例えば,無声子音[p,t,k,s]や母音/i/は小さい印象を有し有声子音[b,d,g,z]や母音/o/は大きい印象を有すると報告されています.しかしながら,これまでのSound symbolismに関する実験方法は無意味な単語(例:ibib,otot)をアルファベット表記で視覚的に呈示し,その単語に対する印象を回答させるといった手法がとられてきました.そこで,実験では音声刺激が聴覚的に呈示された場合にもSound symbolismが存在するのかどうかを調べました.また実験では,さまざまな環境や状況に対して生じるSound symbolismの中でも,特に,視覚的な大きさ判断におけるSound symbolismについて調べました. 音声刺激が有するとされる印象と視覚刺激が与える印象が一致している場合をCongruentと一致しない場合をIncongruentとして,視覚刺激の大きさを判断するのに要した時間(Reaction time:RT)を比較しました.Sound symbolismが存在するならばCongruent時のRTはIncongruent時のRTに比べ値が小さくなると考えました.結果は,音声刺激が聴覚的に呈示された場合にもSound symbolismが存在することが示唆されました.今後の展望として,MRI(Magnetic Resonance Imaging) を使用してSound symbolismが生じる際の脳活動を測定していきます.これにより,Sound symbolismと脳の特定の部位に相関があるのかを調べ,音と言語の関係の解明に役立てるかを検討していきます.

−劣化雑音音声を用いた研究−


  人はどのようにコミュニケーションをとり音声を認識しているのでしょうか. 従来の考え方では, 周波数情報をもとに音声を知覚しているというのが一般的でした.ところが,周波数情報を大幅に削り, 振幅包絡情報を保った音声である劣化雑音音声(noise-vocoded speech sound)を用いた研究により, 振幅包絡情報の持つ重要性が明らかとなりました。劣化雑音音声は人工内耳装用者が聴取する模擬音とされているほか, 初めはほとんど聞き取ることができませんが, 訓練を積み重ねることによって短期間で聞き取り能力が上昇するということが知られています. これより, 劣化雑音音声を使って学習の効率(例えば睡眠による学習効率の変化)や, MRIと組み合わせて聴いたことのない音声の聴き方を獲得するときの脳の可塑性を調べる研究なども行っています. また, 英語と日本語の二つの言語で劣化雑音音声を作成し, 一カ国語話者と二か国語話者の音声知覚にどのような差があるのかというような研究も行っています.

−劣化雑音音声を用いた睡眠学習に関する研究−


  睡眠は, 心身の休息, 記憶の再構成など高次脳機能に深く関わっており, 気分, 記憶力, 集中力といった精神活動が関係しているとされます. 私達はその睡眠の高次脳機能にかかわる部分を睡眠前に行う知覚刺激による学習が睡眠中にどのように処理されるか調べることで研究しています. 使用している知覚刺激は劣化雑音音声と呼ばれる人が普段聞きなれない音声です. 劣化雑音音声とは, 複数の周波数帯域に分割された音声信号から, それぞれの帯域での振幅包絡を抽出し, 対応する帯域の白色雑音と掛け合わせて生成される合成音声です.この音声は, 短期間の訓練によって, 劣化雑音音声が理解できることを示されており, 人工内耳のモデル音声としてもつかわれています. 現在はこの研究により劣化雑音音声を使った知覚学習の際の睡眠の有無が学習効果に及ぼす影響として, 睡眠をとった場合の方が睡眠をとらなかった場合と比べ保持される傾向が示されています. 睡眠をとることにより学習効果を高められることできます, これを通して未知の学習に対しても有意な効果に進められることを明らかにすることを目的としています. 最終的には睡眠を行うことによる学習効果によって覚醒時にはできない行動を睡眠状態で行えるようになることを目指して研究しております.